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2019.01.05モンテッソーリ教具
お仕事する「手」

子ども達は手を動かしたくてたまりません。気になるものがあれば触ってみたいし、落ちているものがあれば拾ってみたいし、使い方を知っているものがあれば使いたいと思っています。しかし、家庭の中の環境は大人の環境になっていて子どもが触ろうとすると<危ない・汚い・壊れる>などの理由で禁止されてしまいます。子どもの家の環境で子ども達が育つゆえんは、生活の全てが子どもを基準につくられているからです。

幼児期は『動きの敏感期』で、子どもは動きを通して様々な事柄を学んでいきます。言い変えれば『動かなければ学べない』という事です。まず、子どもが動く基本となる部分は自分ひとりの力で生活をおくるという事です。親子の様子を見ていると、お母さんは無意識に子どものお世話をしてしまいます。靴を脱ぐことも、服を着る事も、ドアを開け閉めすることも全て先回りして手を貸しています。愛情があるからこそ自然に行動してしまう大人の態度なのですが、手を使いたい子ども達なのに手を使うことを奪われてしまうのす。

私がお伝えしたいことは、『子ども達は大人が思っているより沢山の事を理解していて、もう何でもできるだけの力を備えている』という事です。ただ、どうやって動けば良いのか動き方が分からないだけなので、私たち大人の役割は子どもに手を貸すのではなく、こうすれば一人でできるよ!という『動きの方のお手本をやって見せる』だけでよいのです。

しかし、これは意識していないと非常に難しい事です。大人の動きは連続していて早すぎて、子どもには難しすぎます。子どもに見せるために動くという事は、私たちが意識をもって特別な動き方をしなければ、子どもも見て学ぶことはできません。相談に来られるお母さまから「動きは見せているのですが」とお聞きしますが、「では、やってみて下さい」とお願いすると、ほとんどの場合「その動き方では子どもは分からないですよ」とお伝えしなければいけなくなります。

動きを見せるポイントは沢山ありますが、大切な一つとして、空中で動かないという事があります。机の上、床の上などに置き、どこかに固定させて、からだの正面で見せることが大切です。さちの保育の様子でお伝えしてみましょう。

入園当初登園してきたAちゃん、朝のご用意で手拭きタオルをクリップに止めてドアへぶら下げます。お家でクリップの使い方を見て知っているので見よう見まねで片手ではさんでクリップの口を開こうとしますが握力がないので「出来ない~」と言います。そこで、私はクリップを床の上に固定させて手のひらでおさえて口をあける方法を見せます。出来ると思ったAちゃんは見よう見まねで挑戦します。すぐには出来ませんが何回か練習して「出来た!」と笑顔になりました。私も「上手ね!」と声を掛けます。次の日、タオルをカバンから出したAちゃんは、昨日のことをちゃんと覚えています。何も言わなくても床にクリップを置いて昨日の動きを再現します。何回も失敗しながら時間をかけて手を動かします。10分経ったでしょうか、「できた~」と笑顔でタオルを見せに来るAちゃんがいます。私はまた「上手ね!」と声を掛けます。このように、どうやって動けばよいかが分かった子どもは、大人に依存せずに自分で出来るまで頑張ろうとする姿を見せてくれます。

この時、そばにいる大人には忍耐が必要です。困っている子を助けたいと思ってつい、手出ししてしまうからです。子どもは困っているのではなく、楽しんでいるのです。この時間こそが子どもの心を育てる時間と意識して、大人は手伝わず、声をかけず、忍耐強く待たなければいけません。

双葉が伸びた野菜の苗、早く大きくなってと双葉を引っ張ると土から引き抜かれて育たなくなってしまいます。本葉が出るまでに時間が必要なように、子どもも何かを一つ習得するためにはくり返し練習する時間が必要です。お母さんが忍耐強く待つ時間がこどもの練習する時間となります。

クリップにタオルをはさむことを大人がすればほんの1秒でできてしまいます。しかし、手を動かしたい子どもの為に、その時間が子どもの心を育てる大切な教育であるという意識をもって、愛情を持って見守る事の出来る日常の時間がご家庭の中に沢山増えるといいなと思います。

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2016.11.22モンテッソーリ教具
感覚教育

0~3歳までの子ども達は写真のシャッターをきる様に周りの世界を認識し、情報を雑多に記憶していきます。そして3~6歳で、今まで集めた情報を、同じを見つける、順番に並べる、種類ごとにより分けるといった、3つの知性を使った作業を通してこれらの知識を整理し概念化していく手助けをしていくものが感覚教育です。

少しの差異を見分ける力、物の特質を捉える力などが自然と身につきます。モンテッソーリ教育の代表的な教材で、触れることが最も大切な分野です。子どもは積み木やパズル感覚で楽しみますが、小学、中学になったときに、面積、体積、累乗、乗法公式などの上級算数につながる具体物が教材となっています。写真の教材は幾何タンスという図形の引き出しのお仕事です。○△□は子どもの良く知る形です。お部屋の中から同じ形を見つける、図形のカードを作るなどしてお仕事します。円形の物はすぐに絨毯の上がいっぱいになるほど探すことが出来るのですが、4角形はなかなか見つける事が出来ません。3角形になるともっと見つかりません。

そんなお仕事をした何日か後に、「先生3角形あった~~」と嬉しそうに報告しに来てくれる子どもの姿があります。一つの教材を手掛かりに、今まで気にしていなかった身の回りの物を、図形を気にしながら見るという意識が広がります。幾何立体のお仕事をした次の日は、ご家庭でも急に「立方体・円錐」さがしが始まるので保護者の方も驚いています。子どもにとっては幾何学の図形や立体も、バナナやリンゴと同じように覚えていきます。


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2016.11.22モンテッソーリ教具
言語のお仕事

小さな年齢から手を使ってお仕事する事は、自分の事が自分で出来る様になるための訓練であり、意思通りに動く手を作ること、1つの事にひたむきに向き合う心などを育てます。と同時に、それらは将来鉛筆を持って文字を書くための手の準備にもなっています。

幼稚園入園のころになると「まだお箸が上手に持てなくて」小学校へ入る前には「鉛筆の持ち方がなおらなくて」などのご相談をよく聞きます。小さな年齢の時から靴下や洋服を自分で着る事、自分で使うものは自分で運ぶなどをしている子ども達は自然と指の力も強くなり、意思通りに使える手になってくるので文字を書くことも上手です。子ども達が小さな手で何かを一生懸命にやっている時、側にいる大人はじれったくなり「かしてごらん」と子どもの努力する時間を無意識に奪ってしまいます。そうすると子ども達は手の訓練をする機会をなくしてしまうのです。生活の動きの中で手を巧みに使えなければ文字を書く手を作ることもできません。

例えば、ボタンを一つはめる事に子どもははじめ2分も3分もかかります。しかし、その頑張りを急かさず、とりあげず、見守ることが大切です。

写真のお仕事はメタルインセッツと言うお仕事です。ピンクの枠を片方の手で押さえながら図形の枠ぴったりに線を描くことは子どもにとって意外と難しいお仕事です。図形の枠を手掛かりに色々な方向に鉛筆を走らせる、鉛筆の正しい持ち方や正しい姿勢、色の塗りこみでは筆圧の訓練など、このお仕事の中には文字を書くための沢山の準備作業が隠れています。


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2016.03.10モンテッソーリ教具
算数のお仕事

モンテッソーリーでは数字を理解する時に量の存在をとても大切にします。最初のステップとして規則正しい10進法の量の違いを種類の違った教材で様々な角度で体感します。短いものは長くなる、小さいものは大きくなる、細いものは太くなるといった具合です。

リンゴ10個とどんぐり10個どっちが多い?と聞けば子どもは100%リンゴと答えます。量の違いを感じてきたモンテッソーリっ子は、「10と10でおんなじ。」と答えます。

子どもが数字を見て3と読み始めたり、お皿に並んだトマトの数を1,2,3と数え始めはじめたりしたら、お母さんは10までの数で、子どもの目の前にある具体物を一緒に指さし数えることを始めましょう。大切なのは数える事、そこにいくつの物があるのか答えを出すことではありません。

数えることが楽しくなった子は数をどんどん好きになります。そうやって算数を学ぶ準備をしていきます。

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